忘れることのない「甘く切ない初恋の思い出」が僕にはあります

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僕はこの世に生を受けて早33年、来年になると34歳になります。

今まで歩んできた33年間を振り返ると、とても自慢できる人生とは決して言えませんが自分的には気に入っていますよ。この人生。

家を買い、子供が2人いるごく平凡な家庭の大黒柱として日々の生活に奮闘している訳でありますが、最近よく思い出すんですよね。子供の頃の思い出。

それは、しみったれて思い出している訳ではなく「いい思い出」として就寝前などに振り返ってはホッコリしているのですが、思い出せば思い出すほど懐かしさに心を打たれる訳であります。(十分しみったれてる)

夏に出会った渚ちゃん…元気ですか?

それは小学2年生の夏休み、民間の施設が行っている「夏休み合宿イベント」に母親と姉と出かけることになった時の話。

まぁ、合宿イベントなんて言っても二泊三日でワイワイ行事を楽しむものだったのですが、正直僕は近所に友達もいたので行きたくなかったのを覚えています。

しかし結局は半強制的に連れていかれ、僕はというと施設に着いてからもぶつぶつ文句を言っていました。

そして、辺りを見渡してみると僕と同年齢の子や、少し年上の子ばかり。

そりゃ小学生限定の合宿イベントなのであたり前なのですが、僕は同年齢の子が多いことに少しテンションが上がり、早速みんなの輪に打ち解けて遊び始めたんですよね。

オリエンテーション、リレー、宝探しゲーム…様々な遊びを終えた後に全員で夕食。

お腹いっぱいになったところでお待ちかねの「キャンプファイヤー」です。

恥ずかしながら、施設に到着した時は文句を言っていた僕ですが、この頃になるとイベントを誰よりも楽しんでいたと思います。

そうして、積み重ねられた太い木に火がともされ、辺り一面が明るく照らされたその時1人の女の子がこっちへ歩み寄ってきました。

 

「こんばんわ!私は渚(なぎさ)!君は何年生?」

 

多分、僕は姉と一緒にいたから話しかけやすかったんだと思います。

「2年生だよ!」

当然、小学2年生なので恋心なんて分かりません。

なので、「ドキッ!」ともせずに元気よく返答したんです。

「私は4年生!名前は?!」

こんな感じで、勢いがいい渚に圧倒されながらもすぐに仲良くなり、僕、姉、渚の3人でキャンプファイヤーを楽しみ、その日は就寝時間を迎えました。

イベント合宿2日目

2日目も唸るほどの暑さで、太陽がギンギンと照り付けていました。

僕と言えば、イベントに来ていることなんて忘れて寝坊。

みんなよりも少し遅く起床し、朝ごはんを食べてそのまま自由時間となったのですが、気がつくと渚が隣にいました。

なので、僕と姉と渚の3人で遊び始めたのですが、この日はとても暑かったので施設の裏側にある「海」で遊ぶことに。

水中眼鏡をかけて潜ったり、浮き輪におしりだけ入れてプカプカ浮いたり。

このように1日中海で遊んでいたのですが、そろそろ帰るかといった時に渚の水中眼鏡がなくなっていることに気がつきました。

そして、日が暮れるまで3人で渚の水中眼鏡を探していたのですが、結局見つけられないまま時間となってしまい帰宅することに。

 

「一緒に探してくれてありがとう!」

 

渚はそう言っていましたが、内心はすごくショックだったんだと思います。

イベント合宿最終日

ついに、楽しみ始めた合宿も最終日。

しかし僕はというと、昨日渚が水中眼鏡をなくした浜辺へとやってきていました。

「今日を逃すともう探せない」

そう思い、1人で水中眼鏡を探すことを決断。

浜辺に流れ着いていないか、海中に落ちていないか…見つけ出せる可能性なんてゼロに近いのに、必死に探していたんです。

そうすると…

「何してるの~?!」

ロングヘアーを波風になびかせながら、ニコリと笑顔を浮かべた渚がこちらへ歩いてきました。

「渚の水中眼鏡を探しているんだよ!」

「今見つけてやるから待ってて!」

渚に返事をしながら必死に探していたら…

「じゃ私も探す!」

こんな感じで2人で探すことに。

浜辺に打ち付けてくる波に打たれながら、自分の小学校の話、友達の話、家族の話などしながら一緒に水中眼鏡を探していると、

「なぎさぁ~!ちょっとおいでぇ~!」

渚のお母さんが、手を大きく振りながら渚のことを呼んでいました。

「ちょっと行ってくるね!」

渚はニコリと笑顔を見せて、歩きづらい浜辺に足をとられながら小走りで母親のもとへ。

僕はというと、小走りで走って行く渚を目で追いながら、今日しかないというタイムリミットに焦りを感じつつ水中眼鏡を必死に探すことに。

そうして探していると、渚がまた小走りで僕のもとへやって来てこう言いました…

 

「ごめん!お母さんがもう帰るって言ってるから行かなくちゃ…」

 

僕はというと、その言葉を聞いて残念な気持ちになりながらも、小学2年生にはうまく表現できない複雑な気持ちになったのを覚えています。

水中眼鏡を見つけてあげられなかった事、もう遊べない事、二度と合うことはない事…小学生ながらに一瞬でこのようなことを考えていたんですよね。

しかし、小学2年生の僕にはどうすることも出来ないので…

 

「うん。わかった!またね!」

 

また逢うことなんてないのに「またね」と別れの挨拶をした僕。

そうすると、渚はいつものようにニコリと可愛い笑顔を浮かべ、大きく手を振りながら母親と一緒に帰っていってしまいました。

渚を見送り、1人ポツンと残った浜辺で僕は水中眼鏡探しを再開。

もう渚は帰ってしまったけれど、意地になりながら探していると神様のイタズラなのか何度も探した波打ち際に白と黒の水中眼鏡を発見。

そうして、眼鏡のフチから垂れている白いゴムを見てみると…

 

「なぎさ」

 

やった!ついに見つけた!

渚が母親と浜辺を後にしてから5分くらい。

「まだ施設にいるかもしれない!」

そう思い、僕は全力ダッシュで浜辺に隣接している施設へと走りました。

そうして、息を切らしながら施設に到着し僕の母親に…

「渚は?!もう帰っちゃった?!」

急いで聞くと…

「渚ちゃんちょうど今お母さんと帰って行ったよ!」

 

間に合わなかった。

 

僕は手に握りしめていた渚の水中眼鏡を見つめながら、少し悲しい気持ちになり泣きじゃくってしまいました。

そうすると、見かねた母親が…

「手紙を書いて施設に置いておけば渚ちゃんが取りに来るかもよ!」

そう言ったので、覚えたての汚い字で手紙を書き受付のおじさんに渡しました。

 

…それから26年経った今も、渚が水中眼鏡を取りに来たのかは分かりません。

あとがき

これまで書いたことが子供の頃の記憶の中でとても印象的で、たまに思い出しては…

「渚は元気かな?」

「もう子供を産んでお母さんになっているのかな?」

このように考えてしまうことが、しばしば…。

 

正直、今となっては渚の「顔」を鮮明に思い出せなくなってしまいましたが、綺麗なロングヘアーと素敵な笑顔の持ち主だったということは記憶に残っています。

多分、そのまま大きくなっていたらさぞかし「美人」になっていることでしょう。

しかしながら、渚はこの思い出を覚えてくれているか分かりませんが、覚えてくれていたら嬉しく思います。

また、死ぬまでにもう1度会ってあの時の思い出を楽しく話したい。

 

今思うと、渚は僕の「初恋の人」だったんでしょうね。 

渚は今どこで何をしているのか全く分かりませんが、どこか遠くで小学生の頃の「夏の思い出」を胸にしまってくれていることを切に願います。

 

 

おしまい

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